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3次元CADを利用した21世紀のものつくりの取組み (第1回)


齊木英夫氏
1974年にヤマハ発動機株式会社入社。技術計算システム開発、意匠システム企画運用 CADシステム企画開発等を経て今年2002年よりITセンターソリューション第2グループのグループリーダー。現在は、エンジニアリングチェーンシステムの企画、開発プロセスの改革、デジタルエンジニアリング企画などを推進していらっしゃいます

     

暗黙知と形式知の「お値段」

 

こんにちは。ヤマハ発動機の齊木です。本日はすごく大きな題を頂きまして、どうしようかと考えたのですが、今私が考えていることを少し整理して事例を交えてお話できればと思います。まずは「情報と価値」ということで、暗黙知・形式知の話からスタートさせていただきます。

私の所はオートバイ屋なので、業務のプロセスは

開発
どんな物を商品として作るかのアイデァを生み出し、それを製品情報、つまり製品図のような物に変える
製造
 製品情報を元にして製品を作る
販売
 製品を売ってお金に替える

と大きく3つに分けられます。開発のための情報は、最初はそれぞれの人の頭の中にあるので暗黙知です。それが言葉になりいろんな人に伝えられて行く事で形式知になる。で、物になってお金になる。そして、金をフィードバックさせて新たな経営資源にかえるわけです。

暗黙知と形式知は共に「情報」と捉えられるわけですが、私なりにこんな例を考えています。

コックさんの技能は基本的には暗黙知です。言葉ではなかなか伝わらない。だから、助手はお鍋を洗いながらお鍋の底をこすって味を覚える、なんて修行の仕方があるわけです。情報そのものも個人所有、相手にするお客さんもほぼ個人になる。そしてその分だけ情報の価値が高くなる。
コックさんの体に染み付いている料理の情報をレシピにすると、それは形式知になります。技能に比べ技術という言い方をします。形式知は情報の共有も簡単ですし、伝える事も組織で使う事も社会で使う事も出来る。

暗黙知と、形式知の情報価値をこの例で比べてみましょう。 
高級レストランにはいいシェフがいて料理を作る。非常に見栄えも良くてこれは、一皿何千円でも買ってくれる。ところがホテルになると大勢の人に提供することが必要で、一人のコックさんでは賄えないためレシピを作って大勢のコックさんで作る。これで一品一品は安くなる。そして大きなダイニングで大勢の人にパーティをして頂ける。その次に進むと機械化する。セントラルキッチンで作って給食の様な形で提供する事になる。

食べた栄養価、味はあまり変わらないかもしれませんが、金額に大きな差が出ます。形式知化する事によって量産が可能になり、量産することによって単価は安くなる。暗黙値の状態では量産出来ないけど単価は高い。そこを頭に入れておいて下さい。

 

 
 

 

我々はオートバイや車のエンジンなどの「道具」をつくって社会に提供しています。が、それだけではありません。ソフトウエアとしてヤマハのオートバイを使う喜びと、ヤマハというブランドを持っている喜びを含め、トータルとしての「物」を社会に提供しているのが製造業なのです。

道具だけの機能では、わざわざ高いお金を出して買ってくれることは少ないのです。例えば我々の商売ですと、ある国ではコピーのオートバイがたくさん走っていたりします。安いコピーを買う人は、走ればいい、曲がればいい、2人乗れればいいということですよね。そういう人たちにとっては道具でありさえすればいい。
ところが、別の国にいくと価値観が変わってきます。道具としての価値だけでなく、早く走る喜び、持つ喜び、ブランドにもこだわって来る。社会が豊かになればなるほど商品の価値を認めてくれるようになるんです。

     

「もの創り」「もの作り」「もの造り」

 

「ものつくり」と言いますが、私は「つくり」を「創り」「作り」「造り」の3つにわけています。「創り」はクリエイトです。「作り」は無形で小規模な作成。「造り」は有形で大規模な作成という意味で使っています。

ものつくりのプロセスの中には「創りの領域」「作りの領域」「造りの領域」の三つの領域があると思います。
コストダウンで利益を上げよう。それがこれまでの我々の行動だったと思います。これは「造りの領域」での努力です。しかしこれからは、製造コストダウンによって利益を得るのではなく、新しい付加価値を生み出すことで儲ける事を考えなくてはならない。それが「創りの領域」で考えるべきことなのです。

 

 
 

 

「もの造りの舞台」は、ある品質さえ確保できれば人件費が安いところに移動します。たくさんの産業が中国に移動しています。そこで物を造ると、人件費が安いんです。品質が確保できれば、産業が移動するのは簡単です。我々のように海外に市場がある場合、市場の近くに「もの造りの舞台」が移動するのは非常に有益です。「造りの領域」はそういう人件費の安いところに行ってしまうのではないでしょうか。金型だって、ただ単に客先から3次元のデータを貰ってCAMで計算して金型を削るだけなら日本にいる必要はなく、中国でもポルトガルでもどこでも出来てしまうのではないでしょうか。

じゃあ、金型は大量生産をにらんだ「造りの領域」だから日本ではもうだめなの?と言えばそうではありません。型設計や型を作るノウハウなどは実は非常に知識集約的業務で、どちらかというと「創りの領域」です。日本はそういう「創りの領域」でがんばらなきゃいけない。そうしないと21世紀には日本のものつくりはなくなってしまうぞ、とおおげさですけれども私は思っています。

     

「もの創り」のためのCADが必要

  私たちはESPRi(エスプリ)という自社製3次元CADを使用しています。「いつまでも内製システムにしがみついてて、自分がシステムを作るのが好きなだけだろう」などと色々言われていますが、そうではない、とここで改めて皆さんの前で言いたいと思います。

世間には「3次元CADモデルがあればなんでも出来ます!」なんて言う人がいます。また、雑誌にもそういったことが沢山書いてあります。雑誌の編集者に「何でそんなこと書くの?」と聞いたら、「いや実はスポンサーがそういうとこなもんだからそう書かざるを得ないんだ」と言ってました。「雑誌を信用しちゃいけない」ということをここで改めてお伝えいたします…(笑)。

「3次元モデルがあれば物が作れます」っていうのは「造りの領域」の話なんですね。大事なのは3次元モデルを造るプロセスである「創りの領域」。そこを忘れてはいけません。
市販のCADというのはほとんどが「造り」重視です。既に決まった内容をいかにさっさと作るかというシステムになっている。その中でCADCEUSは少し「創り」の方に寄ってきているなと思います。

我々の目標は「CADで3次元モデルを作ること」ではありません。CADを単なるモデリングツールにしていないか?と反省しなくてはいけません。我々がCADを使ってやりたいのは「設計をする」そしてその設計の結果を「後工程に伝える」ということです。後工程に伝える情報の中に「設計意図」と「開発意図」を折り込むこと。それが「設計をする」ということです。
ですから、欲しいのは「開発意図」「設計意図」の入れやすいCADです。

第一、 はなからソリッドで設計しなさいというのはありでしょうか?

皆さんが何かをつくろうとした時には、たぶん紙の上に鉛筆でスケッチを描くと思います。人が暗黙知を形式知化していくというのはそういう行為だと思うんです。
イメージが生まれたら、まず紙の上で2Dでポンチ絵を書く。ポンチ絵も最初から色を塗る人がいるわけがない。何本か線引いて、いろいろ考えながらいい線を求めていく。CADで言えばワイヤーフレームモデルですね。それが気に入ったときに初めて色を塗ってサーフェスモデルにして、そして、最後にソリッドモデルにしていく。クリエイティブな作業というのはこういう事なのに「それを無視したようなCADシステムになっていませんか?」というのが我々の意見であり反省です。

反省というのは私たちが反省しているわけではなく、そういった反省をCAD業界にしてもらいたいのです。日本ユニシスは既にそういった点をわかってシステムを考えてきてるなと私は認識していますけれども。

   
    第2回につづく・・・
     
   
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