HEADER
検索更新情報サイトマップ English Chinese


   
バックナンバー一覧はこちら >>

創造設計のための失敗知識活用方法


中尾政之氏
東京大学大学院工学系研究科教授。微細加工・機械設計・医療工学・失敗学などを専門とされ、ナレッジ・エンジニアリング/ナレッジ・マネジメント等の分野でも多くの著作を発表されています。
本稿は日本ユニシス・エクセリューションズ(株)におきまして、システム開発に携わるSEやを中心に、エンジニアリングと失敗学をテーマとした「創造設計のための失敗知識活用方法」にご講演いただきました内容の収録です。

     

挑戦すれば失敗する・その失敗をどう生かすかが重要

 

今日はシステム開発に携わるSEの方を中心にお話したいと思います。これからお話しようとする「失敗知識活用方法」はみなさんにも、そして実際にものづくりの現場で活躍されている顧客の皆様にも当てはまる内容です。

最近の日本は「失敗例」に事欠きません。連日マスメディアは企業や官公庁の失敗について取り上げます。私は失敗を大きく4つに分類します。

(1) 組織の閉鎖的な一部門がおこす失敗
  組織内の閉鎖的な一部門が、その部門のためにやりつづけたことが、内部告発で暴露された。
ズルの結果、事故や損失を引き起こし社会的な非難を浴びた。
   
 
   
  組織の成長とともに、部門の長が変わらず出世する。
その結果、健全な他部門はローテーションしながら出世するのに比べ、古い体質が残る。
 
(例)
同族会社・QA部門
     
(2) 組織全体が移り行く社会的規範を逸脱する失敗
  組織全体が変化してゆく社会的規範を感じ取れない。
 
(例)
大学・民間企業・不作為の失敗
     
(3) 組織が予測もできなかった失敗
 

組織が予測もできなかった失敗。事故の文脈を捉えて推測する。

 
(例)
H2ロケットの失敗・9.11の米国同時多発テロ攻撃
カミオカンデ観測機器故障
数十億円の被害を招いたこの故障は、キャビテーションという機械畑の人間には常識であることを、量子力学者が知らなかったことにより発生
     
(4) 組織を挙げて知識を抽出し記録した失敗
  組織をあげて、事実を記録し、知識をまとめ、後世に残している。
 
(例)
田中角栄研究・アポロ13号

実はこの失敗のうち(1)(2)は悪い失敗であり、(3)(4)は良い失敗となります。(1)(2)の失敗は、分析・記録・知識抽出するすれば(4)に変わります。民間企業であれ、官公庁であれ、後世の人々が失敗知識を活用できるようにしておけば、創造設計・創造活動を進展させる材料になりうるのです。

     

人は思いもかけない失敗をする

 

例えば、自動車メーカにおける不具合発生要因を分析していみると、エンジンや過給機などの新規開発装置に不具合が多いのではなく、じっさいにトラブルを起こしているのは圧倒的に線材や管材などなのです。先進の機能は誰もが注目し設計も綿密に行われるが、電気系統の線の取り回しやボルト・ナット・ワッシャーなどのもっとも基本的な電気部品などは注意が向けられないのです。だからリコールが起こって大問題になった場合も、対応はハーネスやブレーキの配管をちょっと強化するだけですむ、といったような処置となることが多いのです。

私は失敗の発生について次のように考えます。

 
 失敗は十分考えていたところからは生じない。
 
 失敗は思考の周辺部から生じる。
 
 それも失敗は時間後れを伴って生じる。

そして、一般の機械設計の失敗の3兄弟は「疲労・摩耗・腐食」。それぞれ、普通の設計者は押し付け合って考えないようなことから失敗が生まれるのです。もちろん、失敗は創造の副産物ですから、単に失敗という現象にとどめず、分析・記録・知識として次の設計に活用になくてはならないのです。

   
 
   

機械設計プロセスにおける失敗知識の活用方法

 

ではどのように、機械設計プロセスに失敗知識を活用すればよいのでしょうか? 機械設計のプロセスを時間軸と新規性・作業者が抱く仕事に対する楽しさという軸で表にすると、以下のようになります。


(a) 第1段階 : 基礎的な教育
  この期間は受講する側は3日で飽きてしまいます。それを防ぐためには次のような方法が有効です。
 
実際に大きな失敗をした先輩が、新入社員に対して自分で自分の失敗を説明してみせる
 
バーチャルリアリティ技術の利用など失敗をシミュレーションできるシステムの利用
   
(b) 第2段階 : 機構の着想
  課題に向かって、創造と失敗を繰り返すことによって「設計解」に到達します。この時ノウハウをナレッジとして3次元CADに組み込むことにより、作業用語・特定形状から試行結果を自動検索したり、変更作業を自動で行えるようになります。
 
作業中に失敗知識を自動提示する設計支援システム利用
ああでもない、こうでもないと試行錯誤することが最適解につながる
     
(c) 第3段階 : 構想自動設計
 

設計解に沿って、設計を形にしていきます。

 
失敗防止策を織り込んだ作業実行コマンドを使うことにより、効率化とケアレスミスによる失敗を防止する
     
(d) 第4段階 : 安全性の確認
 

失敗を含めた設計行動を集めてデータベース化します。製造物責任を意識した取り扱い説明書の作成支援システム構築が必要です。


過去のデータや失敗データを蓄積しただけでは、誰も見ずに再利用もされません。設計者が欲しいときに、欲しいものを、欲しい形で引き出せるユーザ指向のシステム構築をすることが、失敗の利用には何よりも重要なのです。
   
    「創造設計のための失敗知識活用方法」はこれで終了です。
     

お問合わせは こちら

All Rights Reserved. Copyright© 2002-2008 UEL Corporation