HEADER
検索更新情報サイトマップ English Chinese


 

3次元CADを利用した21世紀のものつくりの取組み (第2回)


齊木英夫氏
1974年にヤマハ発動機株式会社入社。技術計算システム開発、意匠システム企画運用 CADシステム企画開発等を経て今年2002年よりITセンターソリューション第2グループのグループリーダー。現在は、エンジニアリングチェーンシステムの企画、開発プロセスの改革、デジタルエンジニアリング企画などを推進していらっしゃいます

     

マルチベンダーか、シングルベンダーか

 
   

CADについて客観的な情報を得ようと外部の方にも頼み、市販CADと我々の自社CADであるESPRiの機能評価を行ってみました。ESPRiは企画・計画の項目では市販CADに比べ勝っています。解析のところもかなり優れています。解析というのは設計行為そのものだという認識があるのです。が、モデリング以降の機能は市販CADが優れています。

では、市販CADの低いところをみなさんどうされているのか?自社CADを作るか、カスタマイズで補うかでしょう。たとえば日本では製品図というのが必要ですが、3次元でガチガチにできている欧米製CADだと製図機能をカスタマイズで作ろうとしてもJISに合わなかったり、大変で時間がかかってどうしようもない。しょうがないから3次元モデルはこちらで、製図は別のCADで、という例もあると思います。

そういうなかでマルチベンダーかシングルベンダーかというと、私たち(ヤマハメンバー)としては「基本的にシングルベンダーは嫌だぞ、マルチベンダーで行くぞ」という考えです。どうしてかというと、シングルベンダーではベンダーの発想に左右されるからです。これがいいという人もいます。

「なにもヤマハ発動機の人がCADの事を考える必要はない、そんなの専門家に考えてもらってそれにのっていけばいい」という言い方もあります。しかし、「嫌だよ、我々は我々の使いたい道具を作りたいんだよ、我々の発想で、我々の主導で行きたいんだよ。」という魂がまだあるんです。


なぜか?それは、差別化が出来るからです。2輪の業界でも、ホンダさんがCATIAで、川重さんもCATIA、スズキさんがうちと同じで自社CAD使っていますが、もしもうちとスズキさんがCATIAを使うとCADのところが全然差別化できない。それぞれの会社がそれぞれに持っている開発プロセスや文化、それが差別化の原動力ですが、同じ道具を使うことでプロセスを道具に合わせる流れが出来て、結果としてどこも同じようになって差別化できなくなっていく怖れがあると思うんです。

たとえば、欧米人はできあがった物をコンピュータの画面に出さないと理解が難しいらしい。そういう文化では、とにかく最初に3次元の形状を作って、それから製品図を書きます。もしも「製図よりも3次元モデルを先につくるべき」という欧米流のCADを選んでしまうと、どこの会社も同じような仕事の流れになります。

日本のエンジニアというのは非常に頭がよくて、製品図を検図すれば形がわかるんです。紙の上で製品設計の良し悪しが理解できる。これは日本人の非常な強みであり、欧米人と勝負出来るところ、日本として差別化出来るところだと思っています。欧米系シングルベンダーに全部のってしまうと、日本人の強みが生かせなくなって差別化できなくなってしまう。ここは日本人として考えたいところだと思います。

だからこそ、たとえ運用が大変であっても「マルチベンダーを選びたい」というのが私の考えです。これは私の考えであって「やっぱりおれは楽なほうがいいよ」という人はシングルベンダーの方がいいですね。要するにそこの決定権は我々が持ちたい。「CAD屋に振り回されたくない」というのがここのところの本題です。

     

避けることは出来ない仕事「データ交換」

 
 

あるCADを使うことに決めても、全ての業務をひとつのシステムでやりきることは実際には出来ないので、最終的に複数のシステムを使わざるをえなくなると思います。その時にはシステム間をデータ交換で回しましょう、ということになります。

CADデータ交換について「ハイエンドなメジャーCADとミドルレンジのメジャーCADだけでやっていればいい」と言う人もいますが、そうではないと思います。

弊社でのデータ交換の実績を分析してみました。データ交換のフォーマットでは、半分以上がIGESです。我々のESPRiでソリッドを扱っていないのでSTEPでのデータ交換は行っていません。相手CADはというと、取引き先等にESPRiを提供していますので3/4くらいがESPRiです。その他は市販のCADシステム。36%、約1/3くらいがCATIAですが、その他にもCaelum、Pro/Eなど10以上のシステムが相手になっています。CAMまで見るとWORK NCなど道具がたくさんあって各社のご事情で最適な道具を選択しておられるので、それらに対してデータを渡さなければならない。「メジャーなCADだけを相手にしていれば良い」とは行きません

 

データをやり取りする時にはCADデータの状態が問題になります。計画レベルのCADデータを渡しても金型は作れません。試作の時にはむりぬきをするとか、形が出来れば良いということでフィレットも足りない、抜き勾配もないというデータで作る場合もありますが、金型を作る時は抜き勾配がつきアンダーカットのないデータにする必要があります。

3次元データ支給という前提で金型受注したんだから金型が作れるデータが来るだろうと思っているとそうではなかったということもある。工程によって必要なデータが違いますから、ただ「3次元データだから大丈夫」とはいきません。

 

それから、モデリングする人のスキルやセンスレベルの問題があります。とにかくあいた穴を塞いでいくようなモデリングをする人もいれば、履歴再生がちゃんと出来るように考えてモデリングをする人もいる。この辺はほとんど人間的要素です。まさしくこれは暗黙知の領域かもしれません。

データ交換というのは、単純にIGESやSTEPやダイレクトトランスレータがあるからいいとか、同じCADを使ってるからいいというのではなく、データのレベルとかモデルの品質とかも含めて捉えなくてはならない問題だと思います。

バラバラとデータ交換をするよりも、私はもうちょっと密な結合をしたいと思っています。情報のドラム缶の中に全部データを押し込めて、どんなCADが来ようがCATが来ようがCAMが来ようがなんでもスパッとデータを取れる仕組み、入れられる仕組みを作りたい。それを我々はマルチCADプラットホームと呼んでいます。実際にはCADごとに色々特徴がありますから上手くいかないかもしれませんが、狙っているところはここです。

そのひとつの例として、我々は自社のESPRiとCADCEUSとでシステム連携を構築しています。オートバイのフレーム、車体はESPRiのワイヤーとかサーフェスでかなりの事が出来ます。イメージも作りやすい。しかし、エンジンみたいな塊ものは、CADCEUSのソリッドが非常に有効です。実際作業する時にはESPRiを使っているのか、CADCEUSを使っているのかを意識せずに使えるように、ESPRiの中にCADCEUSのデータをどんと取り込めるような作りを目指して構築を進めています。情報統合まではできていませんが、CADデータ交換というレベルで「システム間マルチCAD」連携を実現しています。

     
    第3回につづく・・・
     
   
バックナンバー一覧はこちら >>
     
     

お問合わせは こちら

All Rights Reserved. Copyright© 2002-2008 UEL Corporation