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3次元CADを利用した21世紀のものつくりの取組み (第3回)


齊木英夫氏
1974年にヤマハ発動機株式会社入社。技術計算システム開発、意匠システム企画運用 CADシステム企画開発等を経て今年2002年よりITセンターソリューション第2グループのグループリーダー。現在は、エンジニアリングチェーンシステムの企画、開発プロセスの改革、デジタルエンジニアリング企画などを推進していらっしゃいます

     

リードタイム短縮のために

 
   

さてここで、開発のプロセスについてお話したいと思います。
プロセス改革でリードタイムを縮めたくて色々と話を聞いたり調べたりしたのですが、王道はありません。

私が考える限り、プロセスをつめる方法は3つしかありません

同時並行でそれぞれ独立プロセスとして実行する方法 (独立型)
同時並行しつつプロセス間で連携を取る方法 (同時並行)
前のプロセスの中で後ろのプロセスもやってしまう方法 (前倒し)

この3つです。

我々はよく日本ユニシスの人と、コンカレントエンジニアリングやフロントローディングについて話します。このへんの対応はコンピュータを使うとうまく出来そうだと思っているんです。

では、ここで実際の仕事の流れを通して、プロセス改革の例を考えてみたいと思います。

これまでは製品図を元に生産準備をしてもらっていました。サプライヤーさんも製品図を元に型設計します。
ところが近頃はよく「うちはもう3次元CADを使ってるんですよ。ヤマハさんも3次元データでください」と言われるんですね。そこで我々の方で製品図とともに一生懸命3次元モデルを作って「このとおり削ってください」とお渡しする。すると、加工結果がちょっとおかしくても、海外のメーカの場合なんか特に「あなたのデータが悪いんですよ。データどおりにつくっているんだから文句言うな」と叱られて終わりになってしまいます。こういった状況ではこちらの負荷が増えるばかりで、プロセス改革にならないんです。

だったら製品設計からひっくるめてサプライヤーさんにやってもらった方がうまくいくのじゃないか、と我々は考えました。

「後工程が前にくる」がフロントローディングなんだから「後工程の人が前工程のこともやる」体制にすれば早く安く良いものが出来るんじゃないか、という発想です。

例えば、OEMからは計画図(意匠部品の例だと外観データ)をお渡しして「後は製品設計から型設計まで全部やって下さい」とお願いしてモジュール分割すれば、サプライヤーさんとOEMで同時並行作業ができます。そうするとリードタイムもかなり短くていいものができることになります。

日本では「ゲストエンジニア」としてサプライヤーさんにOEMのほうに来ていただいたり、「システムサプライヤー」といって製品設計からやっていただいたり、そういうやり方で上手く流れを作ることができています。これはサプライヤーさんの側に「最終的に良い製品を納めましょう」という意識があるので可能なのだと思います。

日本以外だと、サプライヤーさん側でOEMの意図を汲んで良い物を作ろうとする文化がない。そのためにヨーロッパやアメリカにはエンジニアリング会社があり、製品設計や製品モデル作成を代行してくれます。近頃はエンジニアリング会社とサプライヤーが一緒になって両方の範囲をカバーしようという動きもあるようですが、フランスなどでモジュール化が進んでいるのでやはりそういう発想になってくるんだな、と思って見ています。

     

これからのCADに何を期待するか

 

今までのCADは「形状情報を作りこむ」という使われ方が主体でした。近年はPDMが入ってきて「構成情報くらいいけますよ」と言われていますが、本当にその程度ですむんでしょうか。

クリエイティブな「デザインの領域」では、まず守るべき法規や規定、規格など色々なルールや、昔作ったときの情報などを持って仕事に入ります。その後は解析に行ったり来たりして、モデルではこうだったけど試作してみた結果はこうだった、など非常にたくさんの情報を持つ必要があります。こういう情報をいろんな人が共有してぐるぐるまわしてアイディアをだし、フィードバックすることで品質を上げていきます。

そして製品作製が完了したらそれは完了情報として蓄積され、次の仕事にフィードバックされる。こういう情報のスパイラルルートがあって、こういう情報の回し方が出来なくちゃいけない。このあたりができてこそ、知識型のシステムになるんじゃないかと思います。

そういう意味で、企画から生産準備までの全体を含む「開発情報管理」をきちんと管理して、その上にものつくりのCADがあって全体として回るようにしていきたいです

もうひとつ見方を変えると「CADを入口にしていろんなものと結びつけたらどう?」というコンセプトでCADをポータルとして利用する考え方もあるかなと思っています。たとえばバルブのレイアウトをしながら設計計算が必要な部分はCADからエクセルにデータをはきだして、結果をまた戻す、という風に連携させる。そのほかにも、メールシステムとか、そういった道具との連携を取れるシステムが必要なのではないか、と思っています。

我々がデュアルディスプレイと呼んでいる方式もその一つです。パソコンに2つの画面を繋げて、片方にCADCEUS、片方にESPRiというように、2つのディスプレイを見ながら設計します。CADCEUSで履歴再生をしているあいだに、もう一方のディスプレイで他のいろいろな設計検証をしてみる、といったことができます。デュアルディスプレイはグラフィックカードが対応していれば、簡単にできますので。場所があればトライしてみるといいですね。

「21世紀のCADはどうなる?」という問題について、私としてはこんなふうにまとめています。

クリエイトする「創り」と「作り」をもっと意識したCADであってほしい。デザインという領域をもっと大切にしたい。そのために、CADはモデリングCADから脱皮して、もっと「創り」の部分を考えられるCADにしなくちゃいけない。

それから、自動車会社も、ある一社でCADが決まるとそのグループは同じCADを使わなくちゃならないという世界があるようですけど、そういうんだと何のためにCADをつかうのかわからない。自分がやるこの仕事に一番いいCADは何か考えて、適材適所で使うべきなんじゃないか。マルチCADプラットフォームでCADデータのことを意識しないで複数のCAD機能が使えるようにしたいですね。

その課題を解決するためには形状以外の品質の定義というものをきちんと作っていかなくてはなりません。これはコンピュータ、ITだけでは解決できません。
欲しいのは形状だけでなく、開発意図や要件、条件など様々あります。それらを全体で考えることのできる開発情報管理、または設計情報管理といったものが必要になってきていると思います
身近なところでは、デュアルディスプレイやエンジニアリングポータルなどで実現できるのではないか、と今考えているところです。


     
    「3次元CADを利用した21世紀のものつくりの取組み」はこれで終了です。
     
   
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