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図面レス・ペーパーレスによる自動車用プレス金型製作支援システムの取り組み事例 (第2回)


株式会社オギハラ 生産本部 技術統括部門 設計部 SOLID係 増田 明様に 「図面レス・ペーパーレスによる自動車用プレス金型製作支援システムの取り組み」と題して事例をご紹介していただきます。 前回は「ソリッド化の推進理由」「ソリッド化阻害要因と改善指針」について、今回は具体的な取り組み内容についてご紹介いただきます。 本稿は2003年9月に開催しました、セミナーでのご講演内容です。

   増田 明 氏 プロフィール

1982年に株式会社オギハラに入社。設計実務,検図などの業務を経て、1998年のSOLID係り立上げと同時に現職となる。 また、2003年よりソリッドデータを中心とした図面レス・ペーパレスによる金型製作支援のための開発業務を兼任し、 オギハラにおけるSOLID設計化を担当。
     

S-30 Project

 

ソリッド設計を推進するために、当社では「S-30 Project」を発足いたしました。 「S-30」というのはソリッド設計を30%にするという意味です。

S-30 Project は、次の2つのサブプロジェクトで構成されています。

  • E-Project
    画面レス・ペーパーレスによる自動車用プレス金型製作支援システムの研究開発プロジェクト。 経済産業省の「デジタル・マイスター・プロジェクト」に採択されました。
  • S-Project
    仮想型構造解析支援システム開発プロジェクト。関東経済局の「規産業創造技術開発補助金」に採択されました。
 
S-30 project
  では、この2つのプロジェクトの詳細についてご紹介いたします。今回は「E-Project」についてです。
   

E-Project

  E-Projectは次の5つの機能から成り立っています。
 
   

サブテーマ1:設計着手前の設計情報のナレッジ化

  どこのメーカでも開発の最初の段階で、使用する部品を決めていく打ち合わせをおこないますよね。 弊社ではその打ち合わせのときに、使用する部品とその要件を、デジタル化した型設計仕様書に その場で画面からどんどん入力してデータ化していくことにしました。つまり、打ち合わせ内容のナレッジ化です。

一方でCADCEUSをベースに、それらの情報を読み取って3次元的にふるまう機能を開発しました。 この方法なら打ち合わせ内容伝達の人為的なミスがなくなりますし、打ち合わせ後設計者はいつでも設計を始めることができます。 型設計自体もそうですが、搬送装置や部品のピアス穴情報のように情報が煩雑なものに関しては特に有効です。

打ち合わせのときに入力した情報はナレッジ化されてデータベースに入っています。CAD側では型サイズに応じたテンプレートCADデータベースを持っていて、 ナレッジ化された情報を読んできて、必要に応じて形を変形して決められた場所に仮配置します。

CADCEUSのOBJ構造を利用したテンプレートCADデータですから、上型にあるべきものは上型に、下型にあるべきものは下型に、 必要な部品があるべき場所にあらかじめ配置されていて、搬送装置とかその他、型として必要ないろいろなものがすべて事前にそろってしまいます。 ここまで、CADCEUSでほぼ全自動でやってしまいます。

ですから、設計者が設計をはじめようとして端末の前に座ったときには、設計前の打ち合わせ情報や部品、 型を作るための素材までがすでに揃った状態になっています。その状態から設計者は設計をスタート、 今回の設計要件に適合するようにデータを微調整して型を完成させます。ポイントは、ガチガチに固めたパラメトリックではなく、 仮配置を有効活用する事です。作成したデータは、後で説明しますビューワに対してエクスポートすることができます。

最初これを作り始めたときは全然進まなくてどうしようかと思ったんですけれど、UELさんからSEさんを派遣していただいて、 実際に金型メーカの社内に入ってもらったところ、やはりSEさんは能力があるので、この半年でかなりの成果が出ました。

メーカとシステムの人間が一緒に入って仕事やらないとお互いに何を求められているのかも分からないし、 何を作っていいのかわからないですよね。システム会社が1ヶ月でも2週間でもいいからメーカに入って仕事の中身を知ってくれると、 よりユーザニーズに合ったシステムが構築されるという気がします。
     

サブテーマ2:プレス金型専用設計支援ツール

  鋳抜きだとか隙間埋めなどは、設計者にとっては非常に面倒臭いところですが、 それを補う為のコマンドを開発しました。これはUELさんの力を借りて作成・実装できました。
     

サブテーマ3:NC加工のソリッドデータ活用

  熟練の一軸加工オペレータが頭で考えている事を加工情報としてデータベース化し、 ソリッドデータに入れ込んで加工工程で活用します。

CAMは Die-Stacker (構造部加工を無人化させる、構造部加工専用CAM) を使用しました。加工情報とリンクする加工属性をCADCEUS上で ソリッドデータにつけてからDie-Stackerに渡すと、Die-Stackerで一次加工、穴加工、平面加工、 全部そのままカッターパス、NCデータの出力まですべて自動で行えるようになっています。

加工情報は、データを作って実稼動して結果を見、それをフィードバックして最適な加工情報として整備していきました。 型構造自体も標準化を図っています。なぜ型構造を標準化しているかというと、CAMを実際に運用してわかったのですが、 自動でパス出しまで行うには、型構造を標準化しないと効率のいいカッターパスが出ません。ですから、 カッターの速度が落ちないように形状に工夫をして、削りやすい型構造にすることが必須です。

たとえば下面の座は80Φで一回で削れるような形状に工夫して、カッター速度を落とさないために角を全部R形状にしています。 「そんなこと考えていたら設計に負荷がかかるのでは?」と思われるかもしれませんが、 座の形状を雛型化してありますから、そんなことはありません。幅の短いものは短いなりに、 曲がった形のものもそれなりに雛形があり、それをパラメトリックで変形させて埋め込んでいくだけですので型設計としては全然難しくありません。
     

サブテーマ4:生産活動情報の共有化

  実際のところ、生産用の情報というのはなかなかデジタル化されていません。 規格書や仕様書が紙という会社はまだまだ多いですね。

弊社では、情報を全部デジタル化し、 サーバの中でデータベース化しました。参照はブラウザベースです。

ユーザーからつぎつぎにくる設計変更が10も20もあると、 どれが最新だったかが社内でわからなくなる場合がありますが、この情報共有システムを使えば、最新の設計変更や修正情報、 類似設計などの検索が容易にできます。
     

サブテーマ5:プレス金型専用ビューワ

  加工情報をはじめとしてソリッドデータにはいろいろな情報を組みつけています。 この情報を多くの部署で共有したいのですが、今のCADシステムでは、形状はともかく、 付加した情報まで十分に見られるビューワというのはまだまだ存在しません。

そこで、CADで組み付けた各種情報も含めてブラウザベースで見られる、 専用のビューワ「HANDIBOX
を開発しました。 全体的な部品属性はもちろん、自分の部署で必要な情報に絞り込んで見ることもできます。
設計終了後の検図部署が離れていても、 ビューワ上で検図することができます。データ修正後のチェックもビューワ上でまわせることができます。試作、量産の工程でも同様です。

このビューワは原価計算機能も持っています。部品に付いた属性から、鋳物や加工機、部品代を含む原価計算ができます。 正直言って精度的にはまだまだなんですけど、概略の型費を設計者にわからせるといった意味では非常に有効なツールといえます。 また、部品表データを自動的に作成しExcelなどの表に仕上げてくれるので、購買部での事務処理も軽減されるし、人為的なミスが少なくなります。

型に配置されている部品を指示すると、部品が持っている加工情報や部品属性が確認できます。次工程で必要な情報が不足している場合は、 次工程担当者がビューワ上でデータ上にコメントを書いて設計者に情報を差し戻すこともできます。リアルタイムにデータの受け渡しができるので、 時間も削減できます。

チェックシート機能も準備されているので、社内での規格などをルール化して作業者は設計が終了した後に、 チェック項目を確認しデータの自己チェックが行えます。
     
     
  第3回につづく・・・
   

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