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知識製造業の時代 (第2回)


紺野登氏
1978年、早稲田大学理工学部卒業。株式会社博報堂マーケティングデレィクターを経て、株式会社コラムを設立。千葉大学大学院非常勤講師、北陸先端科学技術大学院大学客員助教授を歴任。知識経営、知識ビジネス、デザイン経営等の分野でコンサルティング、プランニング研究活動に関わっていらっしゃいます。
著書:「デザインマネジメント」日本工業新聞社刊。「知力経営」(共著)「知識資産の経営」日本経済新聞社刊。「知識経営のすすめ」(共著)ちくま書房刊。「日経文庫 ナレッジマネジメント入門」日本経済新聞社刊。

     

プロダクトの価値をあげるには

  あらためて製品を作って価値を生み出すプロセスを考えてみましょう。1.部品を作り、2.それらをアセンブルして製品にし、3.売った後はサービスやソリューションを提供する。それぞれのポイントで生まれる価値を考えてみましょう。

パソコン業界ではモジュール化が進んでいますから、単なるアセンブルには価値がない。価値を生むのは新しい部品か、アセンブル後のソリューション・サービスです。始めと最後は価値が上がって中央は価値が下がるこの曲線を、笑った口に見立ててスマイルカーブと呼びます。これは台湾のパソコンメーカー、Acerの会長が最初に言ったことです。
確かにパソコンのように極度にモジュール化した市場では、先端部品やサービスに利益を求めるのは誤りではないと思います。が、価値が低いからといって、アセンブルして製品にするところを切り捨てると、プロダクトとしての価値創造という道を失うリスクがあります。

では、プロダクトに価値を持たせるにはどうすればいいのか。真中が上がってスマイルではなく一直線になるこのカーブを、笑わないサムライの口に見立ててサムライカーブと呼んでいます。
プロダクト自体に価値を持たせるためには、独自のアーキテクチャーを持つだけでなく、その上に載るサービスやソフト、その他文化的・社会的要素まで全てをトータルに考えなくてはならない。今のお客さんはハードウエアの機能、性能だけではなく、そこまで見て、プロダクトを選んでいます。そこでは製品価値統合の方法論が大事になります。

   
 
     

経験価値とデザイン

 

経験価値」という言葉をお聞きになった事がありますか?
例えばコーヒー1杯分の豆をマーケットで買ったら数セントでしょう。粉にして買っても、1杯分なら10セントもいかない。それをマクドナルドでコーヒーとして飲めば80セントか1ドルくらい。どう転んでもコモディティ的な物は価値を生まない。
それに比べてスターバックスで飲むコーヒーや皆さんが旅に出たときにカフェで飲むコーヒーというのは非常に高い。しかしみなさんは払うわけです。何にお金を払うかと言うと、コーヒーという飲み物にではなく、そこで得る経験に対して払っているんです。

   
 
   
 

ますますコモディティ化が進むインターネット化の時代では、プロダクトにどれくらい経験価値がこめられているかが非常に大事になってきます。

コモディティから抜け出すのにもう一つ重要なのがデザインです。これはデンマークのB&Oの例です。

 

<B&O社のホームページより >
   
 

B&Oのデザインは文化的記憶をうまく使って経験価値を生み出しています。例えばB&OのBeolab 8000というスピーカーはパイプオルガンの形状をしています。スピーカーやプレイヤーも、中世の色々な宝物がイメージされます。
海外で日本製品を調査すると決まって出て来る言葉は「日本の製品は機能的には進んでいるが、どこか冷たくて感情的品質が低い」です。これは日本の消費者も非常に敏感に感じ取っていて、近頃は海外の家電に人気があります。
デザインは経験や知識をプロダクトに変換していく統合的な知の方法論です。日本の工芸に見られたような、情緒的環境を意識したモノづくりの例は、日本の工業製品には多くありません。わたしたちがモノづくりをする時は、新しい部品を作ることやアセンブルが上手ということ以外に、全体をどう作りあげるかという事が大切になると思います。

グローバル化の流れはどんどん激しくなっています。これに流されると、先がありません。本来、未来とは自分で作っていくものです。世の中がどう変わろうと、流されずクリエイティブに自分で作る、こうした姿勢や構えによって新しい価値が生み出される。日本はその方向に進んで行くしかないと思っています。

   
    「知識製造業の時代」はこれで終了です。
     
     
     

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