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金型内流動解析 (溶融樹脂と溶融金属) (第1回)


平林 繁氏
日本ユニシスにおいて金型内の樹脂と金属の流動解析システムを開発。金型の解析システム開発と受託解析の会社 (株)ザ・ワークスを設立 代表取締役。本稿は前半で金型内における樹脂と金属の流れがいかに違うかについて言及しています。後半は最近よく見かけるボクセル解析について、その問題点を単純なモデルで説明しています。日本計算工学会講演会のセッション「日本発のソフトウェア」で発表したものです。

     

1.はじめに

   金型内流動解析は溶融樹脂の型内流動を解析する商用ソフトをオーストラリアのMOLDFLOW社が発売したのが始まりである。1980年前後米国ではコーネル大にプラスティックの射出成形全般に関する官民共同のプロジェクト(CIMP)が作られ、活発な研究開発が行われた。その研究成果から射出成形の流動解析ソフトとして発売されたのがC-MOLDである。現在ではC-MOLDはMOLDFLOWに吸収され,この分野の世界標準になりつつある。国内でも1985年以降に10近い樹脂の流動解析ソフトが開発された。筆者も日本ユニシス鰍ノおいて「MELT FLOW」というシステムを開発している。ただ残念なことにこの分野はMOLDFLOWの圧倒的なシェアのため、現在も生き残っている国内のソフトは2システム程度である。

 一方,金属流動解析は樹脂から遅れること15年以上、1989年に日本ユニシス鰍ゥら発売された有限要素法(FEM)ベースの「METAL FILL」が商用ソフトとしては世界初である。ほぼ同時期にドイツで差分法(FDM)ベースのシステム「MAGMA」が開発されている。1990年代に入り国内では東北大学(STEFAN3D)、大阪大学(MULTIFLOW)から差分法の流動解析システムが発表された。金属流動解析では現在でもFEMとFDMのシステムが混在しているが、金属の型内流動をFDMで精度良く解析できるかが本稿のテーマの一つである。現状、非直交分割(有限要素分割)を採用したFEMベースのシステムで、自動分割による四面体要素に対応しているのは「METAL FILL」と米国UES社の「ProCAST」のみである。
   

2.「METAL FILL」の特徴

   「METAL FILL」は筆者が日本ユニシス鰍ノおいて樹脂流動解析の経験を基にして開発したものであり、当初は2.5次元流動解析(シェル解析)のみであったが、後にソリッド要素を含めた3次元流動解析の機能が加わった。このソフトが非直交格子分割に固執したのは樹脂流動解析での経験とFDMによる解析結果がモデルにより全く信頼できないものであったためで、後章でこの点を詳述する。「METAL FILL」の基本的なアルゴリズムは、自由表面の移動を扱う非定常流体解析の分野では実績のあるSMAC法を参考にしている。SMAC法は直交格子による差分法の解析であるが、これを非直交格子へ拡張したものであり、純粋な有限要素法を適用したものではない。SMAC法を有限要素へ拡張したアルゴリズムの意味を込め、「FEMAC」と呼んでいる。「METAL FILL」の特徴は四面体要素も可能な有限要素法ベースのシステムであることと、薄肉鋳物用に2.5次元流動解析の機能を持つことである。特に2.5次元解析は世界的にも唯一このシステムのみが持つ機能である。
   

3.樹脂流動と金属流動

   金型内流動として、樹脂と金属の相違点についてみていく。流れの観点から両者の差はまず粘度にある。樹脂の粘度は10000Pa s以上であるのに対し、金属はほぼ水と同等の0.001Pa s程度で、10の6乗以上の差がある。高粘性である樹脂は型内で粘性力により拡散的に流動するが、低粘性である金属は高圧で型内へ射出されるため、慣性力により直進的に流れる。簡単な平板流れを比較しても両者は全く異なる流動状況を示す。

 この粘度の差が実験的に型内流動を調べる方法にも大きな違いをもたらす。樹脂の射出成形現場では型内流動を調べるのに従来からショートショットと呼ばれる手法を使う。これは100%の樹脂を射出すると製品形状ができるのに対し、50%の樹脂を射出すると、その途中形状が得られるため、10段階程度に射出量を変化させれば、ほぼ途中の充填状況を再現することができる。ただし、この手法が可能なのは樹脂が高粘度のためであり、同じことを金属で行うと射出量が80%程度以上にならないと安定した形状を鋳造できないのが現実である。金属では代わりに水実験が行われる場合がある。水の粘度が金属に近い特性を利用して、プラスティックで透明型をつくり、金属の代わりに水を流し込んで、途中の充填状況を高速ビデオで記録する方法である。ただし、これも透明型をつくる費用が高い点とダイカスト鋳造並みの高速充填が難しいなどの問題があり、鋳造現場で日常的に行われているわけではない。この実験手段に乏しい点が型内流動解析が樹脂より金属の分野で期待度が大きい理由である。

 以上、樹脂と金属では型内流動が大きく異なるわけであるが、次に解析における相違点をみていく。両者とも非圧縮性粘性流体の近似(Navier-Stokes方程式)が適用されるが、樹脂では高粘性の特徴を活かして, 更にN-S方程式を簡略化する。即ち時間項、慣性項を省略し、粘性力と圧力勾配の釣り合い式を定常解析する(Hele-Shaw近似)。金属の場合は低粘性のため慣性項が重要になり、N-S方程式を簡略化できない。樹脂流動解析のソフトを使い、物性データを金属に代えて解析することも1990年ごろは行われたが, 解析結果は樹脂の流れに近いものであった。
   
    第2回につづく・・・
     
     

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